

梅雨が明けると一気に気温が上がりジリジリと太陽光が照りつけてきます。家も過酷な環境にさらされ経年劣化が進みます。家の塗装は家の外での作業になりますので環境としては非常に過酷なものになります。屋根の瓦の表面温度は70度を超え、屋根の上の作業になれば照り返しもあり体感温度は40度を超えます。
職人としては水分補給と休憩をきちんと取って作業を進めることが基本となります。夏場の塗装は体調管理が非常に重要な要素になります。環境的なことで言えば夕立もこの時期の施工においては気をつける必要があります。

夏の強い陽射し、高い気温によって塗装した塗料の表面が早く乾くのが夏です。「早く乾くんだから、それはいいことなのでは?」と思う方もいるかも知れません。もうすこし正確に言うと表面だけが早く乾きすぎると言うのが正しいです。言い方を変えると表面だけ乾いて内側が乾いていないということです。
表面が乾くと次の塗料を塗り重ねられるような気がしますが、これが不良施工のもとになります。表面だけ乾いた塗料に塗り重ねてしまうと乾いた塗料の表面が新しく塗った塗料によって溶かされます。そうしますと、塗装面に乾いてない塗料が多く付くことになります。そうすると塗料の自重で塗装面から塗料が垂れ落ちて、剥がれ落ちそうになります。そうすると塗装面への塗料の接着が悪くなります。結果、剥がれの原因になります。表面が早く乾くからと行ってすぐに塗り重ねてはいけないのです。
乾燥が不十分なところに重ね塗りをしたときにおきる他の不良施工として「ちじみ」があります。「ちじみ」とは塗装面に皺が寄ることを言います。表面だけ乾いている状態で塗り重ねたときに重ねた塗料が下の塗料を溶かすところまでは同じです。下の塗料を溶かし塗り重ねた塗料が下の塗料へ侵入することで下の塗料が不均一に膨張して表面に凹凸ができます。それが表面にでてきてちじみになるわけです。


このようになるメカニズムを知るには塗料がどのように乾くのかのメカニズムを理解していただくとわかりやすいです。先程から塗料が乾くと言っていますが実は塗料は乾くだけではありません。正しくは硬化してはじめて塗料は性能を発揮します。さらに正確には二液性の塗料であれば化学反応を起こして固まるという言い方が正しいでしょう。水分が蒸発して乾くだけではないのです。この硬化を妨げるようなことをしてしまうと不良施工になるわけです。

塗り重ねるときはその塗料のメーカーが決めた施工要領の硬化時間を守ることが大事です。たとえ表面が乾いていたとしても硬化が完了してから塗り重ねなくてはならないということです。

ちょっと話は広がりますが、塗布する量も大切です。メーカーの施工要領書には塗り回数を何回にしなさい!という指示はありません。「○○回塗りだからすごい」というような謳い文句のチラシやホームページを見ることがありますが、塗り重ねる回数は重要ではありません。施工要領書には一平米あたりに塗布する量と塗膜の厚さが決められているだけです。それを一度では塗れないので何度かで重ねて塗るのです。シンナー等で薄めた塗料を使えば何度でも簡単に塗り重ねることができます。

塗装した表面が乾きやすいことで施工を難しくする要素があります。端的に言えば乾きが早いと塗りムラになりやすいということです。家の外壁に塗料をローラーで塗っていく場合、少しずつ重ねながら全体を塗っていきます。塗り残しがないように塗ったところに少しずつ重ねて塗り継ぎながらひろげていきます。この塗り継いで重なったところが夏場は問題になります。先程お伝えしたように乾くのが早いことで重ねていくタイミングが遅くなると重なった部分に塗料が多く塗布されてしまうことになります。

そうしますと塗り継いだ部分は塗膜が厚くなります。そうすると表面にできてはいけない凹凸ができます。これが角度を変えてみるとムラに見えることもあります。また、厚く塗料が塗布されたところは艶が薄い部分よりより強くでます。そうすると塗りムラになります。こういったムラはお施主様が指摘しても「塗ってあるので問題ないです」と済まされてしまうことがほとんどです。

このように夏場の塗装はやりだしたら一気に塗りきってしまわないと塗り継ぐ部分にムラが発生してしまします。塗る職人の腕、意識で仕上がりが大きく変わってしまうのが夏の塗装です。職人の腕が良くないと一気にさっと塗り切ることができなくなり、見た目を損なう残念な塗装になりかねません。夏場は特に腕の良い職人に塗装をしてもらうことをおすすめします。